炭酸飲料のペットボトルが破裂する理由と予防策
最終更新日:2023.08.31品質管理
炭酸飲料用のペットボトルは圧力に耐えられる構造になっていますが、特定の環境下や製造時の影響を受け破裂する恐れがあります。
ペットボトルの破裂による事故や怪我を防ぐために、製造時の予防策についてご紹介いたします。
炭酸飲料ペットボトルが破裂する理由
飲みかけの飲料を放置し内部で微生物の増殖が起こったり、高温の環境下に長時間放置するなどによりペットボトルの内圧が上昇し変形・破裂に繋がることが多く見られます。
これらは適切でない環境下によって起こるものですが、他にも製造工程の影響や化学的な作用で破裂することがあります。
ストレスクラック
ストレスクラックとは、樹脂製品にかかるストレス負荷(応力や薬品との接触)が続くことによりひび割れ(クラック)に繋がってしまう現象です。
ペットボトルの製造においては、目には見えないほどの切り欠きができることがあり、それが破損の原因になり得ます。 切り欠きができる理由としては、ブロー成形時の成形不良や異物の混入、ブロー成形後に金型から外す際の傷つきやゲートカットなどが考えられます。そこに炭酸飲料を充填することで、かかる内圧が応力となりペットボトルが破損することがあります。
ソルベントクラック(ケミカルクラック)
何らかの薬品や溶剤に触れたことで切り欠きができ、応力によってひび割れてしまう現象で、ストレスクラックの一種です。
ペットボトルはプラスチックでできており、その種類によっては製造過程で接触する薬品や溶剤と反応を起こす可能性があります。反応が起こってからすぐに溶解や変形などの異常が出る場合もありますが、見た目からは判断できない切り欠きができており、炭酸飲料を充填後、しばらく経ってから破損することもあります。
考えられる薬品や溶剤には接着剤や洗剤などもあり、製造ラインや製品運搬時など、どこで接触があるか突き止めるのは困難です。
ペットボトルの軽量化
近年、環境問題への取り組みの一つとしてペットボトルの軽量化が進んでおり、ペットボトルの厚みを薄くする傾向があります。薄くなるにつれて、強度は低くなってしまうため形状などの工夫が求められます。
また軽量化されたペットボトルでは上記のストレスクラック・ソルベントクラックも、厚みのあるペットボトルに比べて早い段階で破損が起こると考えられます。
破裂に対して有効な予防策
ペットボトルの破裂が、運送時や消費者の手に渡ってから発生することは避けなければなりません。そのため炭酸飲料用ペットボトルではストレスクラックテストを行っています。
想定される環境下で試験を行う
ストレスクラック、ソルベントクラックが起こり得る環境下で破裂が起こるか試験を行います。
ストレスクラックは成形したペットボトルに飲料を充填し、様々な温度環境・保管期間などで破裂が起こるか検証します。試験によっては保管期間が数ヵ月を要する場合もあるため、飲料を充填するのではなく、機械によってペットボトルに直接圧力をかけて検証することもあります。
一方ソルベントクラックは、ペットボトルを薬品に浸漬させ破裂が起こるか検証します。この際に飲料が入った状態では、内圧により破裂した際に薬品や器具が飛び散る恐れがあり危険なため、ペットボトルのみを静置した状態で試験を行います。
ストレスクラック測定装置を使用する
ストレスクラック測定装置は、ボトル内部にかかる応力を測定するためのものです。
中でもAT2E社のストレスクラックテスターは、管理環境下でペットボトルを水酸化ナトリウム水溶液につけ、底部の破損の傾向を測定することができます。また同時にペットボトル内部に圧力をかけるため、ストレスクラックとソルベントクラック、両方のテストを一台で行うことが可能です。また破裂が発生した際の薬品やペットボトルの飛散防止、漏れが発覚した際に加圧が自動的に停止されるなど、安全性の高い設計です。
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